株式の投資先を検討する際には、業績が上がり続けている会社ほど株価の上昇が期待できるため、ここ数年という単位での業績の推移を確認するというのが常套手段です。
年平均成長率を意味するCAGRは、その会社が毎年どれくらいのペースで業績を高めているのかを一目で判断できる指標として用いられています。
そんなCAGRについて基礎からおさらいし、実際に投資をする場面ではどうやって活用すると便利なのか、細かく解説していきます。
CAGRは「Compound Average Growth Rate」を着した言葉であり、日本語に置き換えると年平均成長率という意味を持っています。
この指標を見ることによって、その会社がこれまでにどのような成長曲線を辿ってきたのかがわかるので、右肩上がりなのか、それとも丁寧気味なのかを判断できます。
過去と現在に関するデータを収集できるばかりではなく、将来的なCAGRを予測して、その会社が今後も安定した成長を遂げられるかどうか判断できることもCAGRの特徴です。
CAGRを用いる際には、過去5年~10年ほどのCAGRを確認することによって、より確度が高い指標として取り入れることができます。
CAGRの計算方法は極めて複雑で、数学が得意だったという方以外は理解することが難しい数式を用いることになります。
具体的には、(N年度の売上÷初年度の売上)^{1÷(N-1)}-1がCAGRを求める際に利用する計算式です。
この計算式で算出された数字は、成長率の平均を複利で表すものになりますから、長期投資において非常に相性が良い指標を算出できると言えます。
自分自身でCAGRを計算するためには、自力で数式を作るのは困難を極めるため、エクセルを使って計算することがおすすめです。
まずは1Aの欄を年度に、2Aの欄を売上高に設定して、CAGRを算出したい会社の数値をそれぞれの欄に入力してください。
次に「=(F2/B2)^(1/(F1-B1))-1」と入力してCAGRの項目を作成し、計算を実行することで、CAGRを簡単に確認することが可能になります。
会社が利益を出している理由は様々ですが、基本的には売り上げが好調になるに連れて利益も上がり、株価にも反映されていくことになります。
特にベンチャー企業などはこのパターンに当てはまりやすく、目新しいサービスが話題を呼んで人気となり、利益が急上昇するというケースが目立ちます。
新興企業が占める割合が高い、東証マザーズやJASDAQに上場している企業の値動きが激しい理由には、こういった事情も多分に含まれているのです。
CAGRを使うと、このように右肩上がりで順調に業績を伸ばしている会社を見つけやすくなります。
CAGRの値が高い会社ほど、純粋に会社の成長によって利益を重ねている会社であると判断できるため、大きな指標の一つとして用いるべきなのです。
一方で、利益を出していることには変わらないものの、利益を出している理由が会社の成長とは全く無関係なところにある会社も存在しています。
売上そのものは前年やその前の年と比較して変わらないにも関わらず、経費削減などによって利益を生み出している会社がこれに当てはまります。
例えば今年度と前年度の売上が同じ100億円だとしても、今年度に人件費を1億円削減していたとすれば、単純計算で前年比プラス1億円分利益が計上されます。
同じように、投資などによる収入で計上した利益も、本業とはかけ離れた分野での収益ですから、業績として評価することはできません。
こういった企業の場合、利益の額だけを見れば立派な数字が残るかもしれませんが、CAGRの数値は平凡の域を出ないということになります。
勢いや実力がある会社なのか、それ以外の部分で利益を出した会社なのか、どちらかを判断する際にCAGRはとてもわかりやすい指標になるという訳です。
CAGRを参考にしながら買い注文を入れる際には、原則としてCAGR価が高い銘柄に注目し、投資することを心がけましょう。
CAGRの値が高いということは、成長率が高いということでもありますから、右肩上がりの成長を期待することができます。
過去数年間の業績を確認して、急激にCAGRを伸ばしている会社の場合、魅力的な事業を行う注目すべき会社であることがわかります。
勢いのある会社の株を購入すれば、数ヶ月~1年程度という短期間でも、株価を30~50%という急激な速度で上昇させる可能性があります。
長期保有を基本にしながらも、値動きのある株式に投資したいというばあいには、CAGRが急速に上がっている銘柄が買いの候補になります。
急激な数値の情報こそ認められないものの、少しずつ緩やかにCAGRを上げているという会社は、安定した業績を誇る会社と判断できます。
過去数年のデータを遡った際にCAGRの数値に大きな変動がなく、それでいて現状維持か上昇を繰り返している銘柄は、長期保有に向いた銘柄です。
特別な好材料が出現しない限りは、株価の急上昇には期待できませんが、資産として崩れない、倒産しにくい会社を探す方にはおすすめできます。
長期保有による利回りや、株主優待を目的に安定した株を選びたいという方にとっても、CAGRは参考にすべき指標と言えるのです。
CAGRは今年の値上がり率を予想するだけではなく、2~3年後といったスパンでの業績を予想する上でも参考にすることができます。
過去5年のCAGRを見て、平均してどの程度の伸び率を持つ会社なのかを判断すれば、5年後の株価についておおよその見当を付けることが可能です。
また、CAGRの上昇が特定の年度だけに限ったものなのか、それとも継続しているのかを確認できることも強みになります。
「5年前に100円だった株が300円になっている」というだけでは、段階を踏んで300円に到達したのか、バブルのような上がり方をして300円になったのかわかりません。
しかしCAGRを見れば、株価が3倍に到達した理由を知ることが簡単なので、今後どのように伸びる可能性がある銘柄なのかを判断できます。
CAGRは特定の年度間で測った業績を数値化するものなので、サンプルとして採用する年度が変わると数値が大きく変動する場合があります。
5年で計算した場合と、10年で計算した場合とでは、片方が優れたCAGRで、もう片方は悪いCAGRになってしまうということも起こるのです。
ある意味では曖昧な基準で数値化されていくのがCAGRですから、どの数値がより現実的な値になるのかを検討することが重要です。
また、未来に関する伸び率を推し測れることもCAGRならではのメリットではありますが、過去と同じような成長曲線を辿り続けられる会社はほとんどありません。
どこかのタイミングで業績が悪化したり、投資家の判断によって強く売られたりすることもありますから、CAGRへの過度な期待は厳禁です。
CAGRは年平均成長率を意味しており、この指標を活用することによって、将来的な会社の成長曲線を推し測ることができます。
一般的にCAGRが大きい会社ほど成長率が高いと判断でき、これを基にして急激な成長に期待できる会社や、堅調さを維持できる会社を見つけることが可能です。
しかしCAGRは参照する年齢によって数値が大きく変動することがある上、未来の成長率に関しては推測でしか推し測ることができませんから、過度な期待は厳禁と言えます。